「うちの子、すっぱいのが苦手で…」「苦い野菜は絶対に食べないんです」
そんな悩み、どこの家庭でもよくあることです。

でも実は、味の好みは“経験”で育つもの。
酸味や苦みが苦手なのは、単にまだ慣れていないからかもしれません。

味覚は生まれつきではなく、育てるもの

人の舌には「甘み」「うまみ」「塩味」「酸味」「苦み」の5つの味を感じる力があります。
この中で「甘み」「うまみ」「塩味」は、エネルギーや栄養に直結するため、子どもも本能的に「おいしい」と感じやすい味。

一方で、「酸味」や「苦み」は、腐敗や毒のサインでもあるため、警戒して「嫌い」と感じてしまうのです。

しかし、くり返しの食体験とともに、子どもの味覚は変化します。
最初は苦手でも、「おいしかった」「楽しかった」食事の記憶が、少しずつ味の世界を広げていくのです。

五感を使って「おいしさ」を楽しむ食卓を

味覚は舌だけのものではありません。
見た目の彩りや盛りつけ、香り、食感、そして食べるときの雰囲気――
五感を刺激することが、「食べてみようかな」という一歩につながります。

たとえば、ちょっと苦手なピーマンも、かわいい型抜きや炒めて香ばしくすれば、「おいしい!」に変わることも。
「すっぱい」と顔をしかめる梅干しも、おにぎりの中で意外とパクっと食べられたりします。

「上手に食べられたね!」「今日はちょっと挑戦できたね!」
そんな言葉がけも、子どもの自信につながります。

家庭の食卓が、子どもの未来をつくる

子どもの味覚や食習慣は、家庭の食卓から始まります。
忙しい日々の中で、つい簡単なメニューや似たような味つけに頼りがちかもしれません。
でも、「おいしく食べる経験」こそが、豊かな人生の土台になります。

「いっしょに食べて楽しかった」
「ママと作ったごはんがうれしかった」
そんな小さな体験の積み重ねが、一生の「食べる力」「生きる力」になります。

まとめ

味覚は、経験で育つ力です。
毎日の食卓が、子どもの味覚を広げ、人生を彩るきっかけになります。

完璧じゃなくても大丈夫。
「楽しく食べる」「挑戦してみる」――その一歩を、今日の食事から始めてみませんか?

【参考文献】

・厚生労働省「子どもの健康を守る食育」
・農林水産省「味覚の育成と五感教育」
・日本小児科学会「子どもの食生活と発達」