「人に迷惑をかけないようにしなさい」

そんなふうに子どもに声をかける場面、ありませんか?

もちろん、まわりへの配慮を伝えるのは大切なこと。

でも、もし子どもが「迷惑をかける=悪いこと」と思い込みすぎたら、誰かを頼ることや、間違えることさえ怖くなってしまうかもしれません。

今回は、インドに根付く考え方や、ガンジーの言葉をヒントに、「迷惑」に対する少し違った見方をご紹介します。

■ インドの教え:「人は誰かに迷惑をかけて生きている」

インドでは、子どもたちにこんなふうに教える学校もあります。

「人は誰かに迷惑をかけながら生きているもの。だから、人に迷惑をかけられたときには、許せる人になりなさい。」

この教えには、「誰でも不完全」という前提と、「だからこそ支え合おう」という温かい視点があります。

人と人との関係は、ミスや迷惑があっても、それを許し合うことで成り立つという考え方です。

■ ガンジーの言葉:許すことは“強さ”の証

インドの偉人マハトマ・ガンジーは、こんな言葉を残しています。

「弱い者ほど相手を許すことができない。許すということは強さの証だ。」

許すという行為は、ただの我慢ではありません。

自分の感情をしっかり受け止めたうえで、相手の不完全さを受け入れることができる人こそが、本当に強い人だという教えです。

■ 日本では「迷惑=悪」の意識が強い

一方、日本では「迷惑をかけないこと」が重視されます。

それ自体は悪くありませんが、強すぎると次のような傾向が生まれます。

  • 他人のちょっとしたミスに厳しくなる
  • 失敗や頼ることを恥ずかしいと感じる
  • 誰かに助けられることを遠慮してしまう

そして、大人社会でもSNSでの誹謗中傷や「失敗を許さない空気」など、息苦しさにつながっている部分もあるかもしれません。

■ 子どもには「許す力」も育てたい

子育てで大切なのは、「迷惑をかけない子」を育てることだけではありません。

「人はときに迷惑をかけたり、かけられたりしながら生きている」

「だからこそ、“ごめんね”と“いいよ”を言える関係を大切にしよう」

そんなふうに伝えていくことで、子どもは人の弱さも受け入れられる、やさしい心を持てるようになります。

■ さいごに|やさしさと強さはつながっている

「迷惑をかけないように」だけでなく、

「迷惑をかけても大丈夫。謝って、またやり直せばいい」

と伝えることで、子どもは安心し、のびのびと育っていけます。

そして、誰かの失敗に対しても、すぐに責めるのではなく、許せる強さを持った子に育ってくれたら――

それは、ガンジーが語った“本当の強さ”に近づいているのかもしれません。

【参考文献】

  • 『子どもに伝えたいインドの教え』講談社(※教育現場での指導例を紹介)
  • マハトマ・ガンジー名言集:「弱い者ほど相手を許すことができない。許すということは強さの証だ。」
  • 『日本の道徳教育と社会的同調圧力』中山雅之(2020年、教育社会学研究)
  • 総務省「インターネット利用環境実態調査」(令和5年度)