子育てや家事に追われていると、「疲れが取れにくい」「最近ちょっと体力が落ちた」と感じることはありませんか?
これは年齢のせいだけではなく、体の中で少しずつ積み上がっていく「老化負債」が関係しているかもしれません。
老化負債の考え方
「老化負債」とは、お金のローンのように体の中に“元本”と“利子”がたまっていく仕組みで説明されます。
- 元本:体に残ってしまうダメージ(DNAの傷、細胞の老化、ミトコンドリアの弱りなど)
- 利子:炎症やホルモンの乱れ、酸化ストレスなど、元本があるほど加速する悪循環
- 返済:体が持つ修復力や再生力。年齢とともに落ちやすいけれど、生活習慣を整えれば高められる
つまり、毎日の生活で「利子を減らす工夫」と「返済力を高める工夫」をすることが、老化をゆるやかにしてくれるのです。
老化が進む原因
体が老けていく仕組みはいくつもありますが、代表的なのは次のようなものです。
- DNAの傷が増える:紫外線やストレスで細胞の設計図が壊れる
- 細胞分裂の限界:テロメアという部分が短くなり、細胞がもう働けなくなる
- エネルギー工場(ミトコンドリア)の弱り:疲れやすさの原因
- たんぱく質のゴミがたまる:神経細胞などで影響が大きい
- 慢性的な炎症:腸や歯周病、脂肪などが炎症を続ける火種になる
体内リズムとホルモンの大切さ
私たちの体は24時間のリズムで動いています。
- 夜に分泌されるメラトニンは眠りの質を整え、抗酸化作用も持つ
- 深い睡眠のときに出る成長ホルモンは細胞修復をサポート
- 朝に高まるコルチゾールは体を目覚めさせる
夜更かしや睡眠不足は、このリズムを乱し、老化負債の“利子”を増やす原因になります。
臓器ごとに違う老化
老化は全身で同じスピードで起こるわけではありません。
- 心臓や血管:弾力がなくなり、高血圧や動脈硬化が進みやすい
- 腎臓:ろ過機能が落ち、たんぱくが漏れやすくなる
- 脳:老廃物を流す力が弱まり、物忘れが増える
- 筋肉や骨:力が落ち、転びやすくなる
- 免疫:感染症やがんの監視が弱まる一方で、炎症は強まる
弱い臓器から老化負債がたまりやすいので、自分の体の「苦手ポイント」を知ることが大切です。
体からの小さなサインを見逃さない
「まだ大丈夫」と思っていても、次のような小さな変化は老化負債のサインかもしれません。
- 睡眠が浅くなった
- お酒が弱くなった
- 便通の変化
- 怒りやすい、疲れやすい
- 読み間違いやちょっとした記憶ミス
こうしたサインを早めに気づくことが、負債を大きくしないコツです。

家庭でできること
子育て中でも、無理なくできる工夫があります。
- 睡眠をしっかりとる(スマホの光は寝る前にオフ)
- 炎症の元になる食品を減らし、野菜や魚を増やす
- 軽い運動で筋肉を刺激し、代謝を高める
- 家族や友達との会話で孤独感を減らす
小さな工夫を積み重ねることで、老化負債の“利子”を抑え、返済力を高めることができます。
まとめ
老化は止められませんが、そのスピードは自分の工夫で変えられます。
睡眠・食事・運動・つながりを整えることで、老化負債を管理し、体の寿命をゆるやかに延ばしていきましょう。

【参考文献】
- 伊藤裕『老化負債 臓器の寿命はこうして決まる』